さよならなんて云えないよ

2018/09/09

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小沢健二っていうアーティストがいてね。
大学のゼミの先輩から教えてもらったんやけど。

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「尾崎豊すきなんですよー」
いうたら
「そうなん?じゃあオザケン聴いて!小沢健二ね!」
やって。
よく意味わからんかったけど聴いてみたら納得した。
めっちゃすきな感じ。

難しいことを簡単にいうのってすごく難しくってさ。
でもオザケンはそれをさらっとやってのけてる。

思想なきところに正しい一歩は生まれんと思うし、
思想ありきの人間やと思うから、
すごい大切なもんやと個人的には思ってるんやけど、
思想の世界って、なんか禍々しいイメージあるように、
たしかにすごくこわいものなんよね。
深みにはまったら、現実世界じゃ生きていけなくなるような。
そこのバランス感覚はすごく難しいものがあって、
時々自分もそこのバランス感覚を崩しそうになってしまうときがある。
そんなときオザケンの曲を聴くと、救われたような気持ちになる。

おそらく彼もそういう思想の世界との渡り合い方に相当苦心した末に、
これほどまでに練り上げられた、耳通りが良いのに心に残る歌詞、
つまり、難しいことを簡単に言っている歌詞を書くことができているのだろうと思うから。
めっちゃ難しい数学の問題といてて、発狂しそうになって、
答え見たらめっちゃ簡単なやり方で解いてたっていうような、
そんな感覚かな。

何かを書こうとするときには、何かを考えるときには、
最初はなんらかの外的刺激、外的影響が起点としてある。
それが感覚を通して自分の中で言語化され、
自分の中にある引き出しの材料と比較したり、照らし合わせたりしながら、
いつの間にか思想へと転換されていく。
その際に深く考えて研ぎすましていこうとすればするほど、
その過程の中で他の人から見ての解釈難易度は上がっていく。
研ぎすませていくためには自分の中での思考工程が増えて、
思想構造が何重にも重なるので当然の話。
だから思想書とか、哲学の本とかは難しいんだと思う。

オザケンは一度自分の中で研ぎすまされたその思想を、
故意にかはわからないけど、他の人にも分かりやすいようにもう一度
言語表現的に研ぎすませて歌詞に落とし込んでいるように思える。

曲の中に込められたメッセージはとてもじゃないけど、
そのプロセスをへてからじゃないとその言葉では表現しきれないようなものだから。

そんなオザケンの曲の中で俺が一番好きなんが
「さよならなんて云えないよ」
っていう曲。

個人的にこの曲のテーマをいうならば
「絶対的な存在である時間と、人と人の出会いとの間の刹那と永遠」。

リンクをはったのは「さよならなんて云えないよ」のアレンジバージョン。
曲名は「美しさ」に変わっている。こっちの方が個人的にはすき。

青い空が輝く太陽と海の間
オッケーよなんて強がりばかりのきみを見ているよ
サクソフォーンの響く教会通りの坂おりながら

美しさ oh baby ポケットの中で魔法をかけて
心から oh baby やさしさだけが溢れてくるね
くだらないことばっかみんなしゃべりあい
嫌になるほど続く教会通りの坂おりてゆく

日なたで眠る猫が背中丸めて並ぶよ
オッケーよなんて強がりばかりを僕もいいながら
本当は分かってる 心にいつか安らぐときはくるか?と

美しさ oh baby ポケットの中で魔法をかけて
心から oh baby やさしさだけが溢れてくるね
くだらないことばっかみんなしゃべりあい
嫌になるほど誰かを知ることはもう二度とない気がしてる

左へカーブを曲がると光る海が見えてくる
僕は思う!この瞬間は続くと!いつまでも

南風を待ってる 旅立つ日をずっと待ってる
オッケーよなんて強がりばかりをみんないいながら
本当は分かってる二度と戻らない美しい日にいると
そして静かに心は離れてゆくと

美しさ oh baby ポケットの中で魔法をかけて
心から oh baby やさしさだけが溢れてくるね
くだらないことばっかみんな喋り合い
街を出てゆくきみに追いつくようにと強く手を振りながら

いつの日か oh baby 長い時間の記憶は消えて
やさしさを oh baby ぼくらはただ抱きしめるのかと
高い山まであっという間吹き上がる
北風の中僕は何度も何度も考えてみる

永遠なんてものはどこにもないけれど、
永遠を感じることはできる。

何気ない毎日の繰り返しは変哲もなくて、
あっという間で、どこか不満で、でもなぜか嫌にはならない。

こんな日々が、ずっとこれからも、
永遠に続くんだろうな、と思ったりする。

楽しい時間は特にそうで。
こんなに楽しい仲間たちとの時間、
お互いに楽しんでいるんだから、
この関係を切る理由がない。
「これからもよろしく!」です。

でも、日々刻一刻と時は流れ、
年を取り、考え方は変わり、記憶は消え、
新しい人や新しいものと出会う。
そんな中で、静かに心は離れてゆく。

永遠を感じることはできるけれど、
永遠なんてものはどこにもない。

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おそらく生まれて初めて花をもらいました。
花をあげる本当の意味なんて考えたことなかったけど。
贈り物としては、後々まで残るものに価値を見いだしていたけれど。
やがて散りゆく花だからこそ、贈る価値があるんやね。

こんなにも花を美しいと思ったことはありませんでした。
あと少ししか一緒にいられないと思うと、
この花がいとおしくてたまりません。
香り、手触り、色、そのすべてが。

この花を見てると、いずれ散っていくだなんて想像もできない。
けれどこの花のいのちに、その美しさに、永遠なんてものはない。
花のいのちは短いから見えやすいけど、
ほんとはみんなそうなんだろう。
気持ちを込めてもらった花を愛でるように、
すべてのものたちに接することができたらいいなって、思う。

その想いは、この花が散っていったとしたら、
共に散っていってしまうのかなって思うと、
いや、散らせたくない。って、思う。
心を込めて贈ってもらった、そのやさしさの結晶のような美しい花。
その姿形に永遠はありません。
そのときにはさよならを云わなくちゃ。
けれど、この花が教えてくれたその想いだけには、
そのやさしさだけには、その美しさだけには、
さよならなんて云えないよ。

たとえ離れても、いいよって。大丈夫だって。
そう思えるのは永遠のように思えるその刹那を共に共有したから。

そして、たとえ一人になっても、
その刹那の中で共に笑い、共に泣いて、
一緒に心の中に育んだ美しさややさしさ、思い出。
それだけは、永遠に消えない。

そして、辛いとき、悲しいときに支えとなってくれるのは、
他ならぬそのやさしさや美しさだと思う。
そして、それがあるから、他の人にもやさしくなれるのかもしれない。

そう思うから笑顔で新しい扉を開けるんだし、
そう思うから新しい扉のその先でもきっと大丈夫だって思える。

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Thank you,and say good bye.

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